軽井沢辞典
2022.10.21
なぜ軽井沢の大工さんはこうも忙しいのか?
今軽井沢で家が建てられません❕!!
いや実際、今わたしは家を建てているんですが、大工さんの会社、一般的には工務店、わたしはビルダーと呼びますが、今ビルダーはなんせ仕事を受けてくれません。
よっぽど1社のビルダーにほれ込んだら別ですが、普通家を建てる時には複数社と話をして見積りを取ると思います。当然、高い買い物ですから。でも、今回は5社に話をしたのですが、結局1社しか見積もりまでたどり着きませんでした。だから結果的に相見積もりができなかったということです。
それだけ軽井沢の建築業界がひっ迫しています。もちろん、軽井沢で家を建ててくれるビルダーは軽井沢だけではなく、御代田、佐久、小諸、北軽井沢も含めたエリアですが、これらのビルダーさんたちのキャパには当然一定の上限があります。そしてこれらのビルダーが全体としてものすごく忙しくなってしまっています。
経済学の原則に従って、これだけ需要が高まると当然値段が上がります。コロナ前なら軽井沢に別荘を建てる際の平均的な値段は坪当7,80万円くらいだったでしょうか。でも今では普通に坪100万円を超えてしまうようです。
なぜ軽井沢ではこのように建築ラッシュが起きているのか? わたしなりにその理由と背景を考えてみました。
1つには、軽井沢の建築市場に流れ込んでくるおカネの種類が変わってきてること。軽井沢は日本で一番有名な避暑地です。だから当然軽井沢に家を建てる人は、暑い夏を軽井沢の高原で涼やかに過ごすことを主な目的としていました。その伝統的な背景に最初の変化が起きたのは20年前ほどでしょうか? 住宅の性能が上がり、高断熱住宅が登場してきたことで、寒い軽井沢の冬でも暖かく過ごすことが可能となってきたのです。もちろん、すべての家が一足飛びに暖かくなったのではありません。高断熱のノウハウを持つビルダーに依頼して、高断熱の家を建てるという意図を明確にして建てた場合、という但し書きが着きますが。
これにより別荘はセカンドハウスへと進化しました。そして軽井沢は夏に避暑地から、通年を通して美しい森に癒される保養地へと徐々に変貌を遂げたのです。1年を通して訪れることができるセカンドハウスの方が、当然需要高くなります。実際、別荘を持つと避けては通れない固定資産税に関しても、別荘とセカンドハウスでは大きな違いがあります。月1回は訪れて滞在する、というのが町役場のセカンドハウスに対する定義で、これをみたした家の固定資産税は通常住んでいる家と同じ額にまで軽減措置が適用されるのです。
そしてコロナ禍、そしてポストパンデミックを通じて軽井沢で空前の建築ラッシュを生み出している原因、これをわたしは軽井沢での1.5 ハウス需要と呼んでいます。 まずリモートワークの進展により、オフィスに必ず毎日通勤する義務から解放された結果、東京ではなく地方へと居を移す人が増えました。そして東京への通勤圏として見た場合、軽井沢はかなりな魅力に溢れています。
軽井沢を東京24区と呼ぶ人がいるくらい、東京と軽井沢は人とカネの両面で密接につながっています。軽井沢ツルヤが都内の有名スーパーに引けをとらないくらいの品ぞろえ(しかもはるかに安い!!)を誇ることは偶然ではないのです。
セカンドハウスから、ファーストハウスへ、このように軽井沢の住宅需要が変化してきたことは、言うまでもなく最近の建築ラッシュの大きな原因となっていると考えられます。自分の住んでいる家にプラスして、数千万円を負担してセカンドハウスを持つ、これはいうまでもなく大きな財政的負担であり、実行できる人は資金に余裕がある人に限られます。
それに対して、東京のマンションを手放して軽井沢に居を構えるとなると、投入できる予算もはるかに大きくなってきます。これが最近の軽井沢の建築ラッシュ、そして高価格化の背景となっていると考えて不自然ではないでしょう。