軽井沢辞典

2022.07.26

ジョンが愛した軽井沢#2

”ストロベリーフィールズに行かないか?
そこではすべてが幻
咎められることなど何もない
ストロベリーフィールズよ 永遠に”

前投稿では、ジョンレノンが生前に軽井沢を愛した背景を探る中で、彼が生まれ育ったリバプール郊外の住宅地と軽井沢の共通点を見てきました。

下の写真、左がリバプール郊外、そして右が軽井沢の別荘地の小路です。人気のない、緑が溢れる風景がとてもよく似ています。実際、標高1000mにある軽井沢の気候は、日本ならば札幌に似ていると言われます。これはそのままヨーロッパの気候なのです。

ビートルズでの音楽活動を通じて莫大な成功、富、名声を得たジョンでしたが、1967年以降、その社会的成功がもたらす悪い側面に鋭く気づいていました。直観的に思いたったらすかさず行動するジョンは、ビートルズ時代のアイドル的な社会的イメージを打ち壊すような行動を続けます。

極めつけは、1975年待望のショーンレノン誕生をきっかけとして、ショービズからの隠遁でした。

”人々はぼくを怠け者だといって非難する。夢見て人生を浪費しているとね
きみはもはやゲームに参加していないから幸せなわけないだろう。
でもぼくらは彼らに告げる。
解決がまわりに散らばっているとね。ぼくはここで壁に映る影を見ている。
何も問題などないんだ”
ジョンレノン Watching the wheels

ジョンはヨーコと一緒になってからは、ショービズの世界でカネと名声に踊らされて、誰かのゲームを演じるのはもう十分、これからは自分の人生を生きると心に決めていたのです。そして、そのようなときなんとショーンくんを天から授かったのです。確か当時ヨーコは40歳を超えていたはず、かなりの高齢出産でした。

またジョンはビートルズが有名になりはじめた頃に生まれた第一子ジュリアンくんに対して、父親らしく接してあげなかったことに対して、深い罪悪感を感じていました。これは1970年頃久しぶりに会う父親のジョンとバギーに乗せてもらい、いとおしげにジョンの背中にしばみつく彼の表情が涙を誘います。

ジョンが初めて軽井沢を訪れた1976年の夏、ショーンくんは1歳ちょっとでした。可愛い盛りです。ジョン、ヨーコ、ジュリアンは軽井沢の緑の中でゆっくりとした時を過ごします。まさに避暑地軽井沢の王道的な時間の使い方です。

軽井沢で別荘を持とうとすると最低でも数千万円のおカネがかかります。自宅でもないセカンドハウスにこれだけの金額を投じることができる財を成すには、大変な努力が必要なことでしょう。

仕事をこなすこと、良き父、母であること、おカネを稼ぐこと、パリッとかっこよく、あるいは人がうらやむ美人でいること、友達を作ること、

わたしたちの人生にはこれらの”すること”で溢れています。

軽井沢は古くは外国人宣教師が見出した町でした。100年以上前に、遠くはるばると海を越えて布教にやってきた宣教師たちは、東京の灼熱の夏を脱出して、軽井沢の爽やかな高原で美しい森の中で神の恩寵に感謝しながら清らかな生活を送ったことでしょう。美しい保養地としての軽井沢の伝統は、この辺りに起原があるのです。

ジョンも、ショーンくんを賜ったことを天に感謝しながら軽井沢の自然を満喫しました。彼がここをどれだけ気に入ったかは、それから1978年まで3年連続で夏に戻ってきたことからも推測できます。

残念なことにジョンが凶弾に倒れるまでにそれほど長い時間は彼には残されていませんでした。

それでも、NYダコタハウスの自宅でそして軽井沢で、ショーンくんとの貴重な時間を得ることができたジョン、今でも軽井沢の小路で彼の息吹を感じることができるでしょう。

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