軽井沢辞典

2021.12.16

軽井沢の変遷~避暑,別荘からセカンドハウス、そして1.5ハウス、民泊

早いもので2021年も年の瀬を迎えています。去年、そして今年は言うまでもなくコロナパンデミックで社会が大きく揺れた2年間でした。

コロナウィルスはまだまだ長く付き合っていかねばならないのか? ポストコロナ、ウィズコロナという言葉が頻繁に飛び交うことからもうかがえるように、これからの社会がどのように変わっていく、変えていかねばならないかが問われています。

軽井沢は東京24区と揶揄されます。それほど軽井沢は東京と人、そしておカネの面で東京と密接に繋がっているのです。日本広しと言えども、このような場所は他にはないように思えます。

去年春先のパンデミックの初期の頃は、テレワークの普及に伴って東京からの人口流出がまことしとやかに囁かれました。しかし、その後東京の不動産市況は、マンションを中心として高騰、当初予想されたようには、人々は東京を後にしなかったようです。

個人的には、これはある意味当然至極に思えます。東京の”魔力”はそれだけ大きいのです。単に、毎日職場に通勤しなくてよくなっただけど、さっさと都を離れて、田舎へと旅立つ人々はそうは多くなかったのです。

しかし、軽井沢はコロナ下の状況でその不動産価格を大きく上げているようです。町を車で走ってみると、あちこちで建築が行われており、建築ラッシュの様相さえ呈しています。

今果たして軽井沢で何が起こっているのでしょうか?

いうまでもなく軽井沢は長らく避暑のための場所でした。新幹線も高速道路もまだなかった頃、人々は半日ほどを費やしてやっとのことで碓氷峠を超えて、別天地の高原軽井沢へとやってきて、そしてひと夏を過ごしたのです。

その後、1990年代に信越道高速道路、そして長野新幹線が開通、これがゲームチェンジャーとなって軽井沢の滞在方法が大きく変わりました。 それまで避暑の時代ならば少なくとも数日は軽井沢に滞在していたのが、片道2時間ほどでこれることがから一泊二日でも十分来れるようになったのです。高速道路でのアクセスが容易な北関東からでは、プリンスアウトレットなどに日帰りドライブで来る人達も結構多いのではないでしょうか?

このアクセスの改善により、軽井沢の別荘の使い方も大きく変わりました。それまでは、主に夏に利用するという季節ごとの利用が中心であったのが、例えば金曜日の夜に出て日曜日に返るという短期滞在も可能になってきました。

別荘からセカンドハウスへの進展です。

実際、軽井沢町では毎月の利用がある場合にはセカンドハウスと呼び、固定資産税が住宅と同じ税率に軽減される措置を提供しているのです。

また別荘がセカンドハウスへと進化する上で、もう1つ大きな要因があります。家の断熱性能です。もともと避暑を目的とした軽井沢の別荘ならば、できるだけ風通しをよくすることで事足りました。

まさに吉田兼好が徒然草で書いたように、”家は夏をもって旨”とすれば事足りたのです。

軽井沢へのアクセスが良くなった1990年代に時を同じくして、家の性能、特に断熱性能が良くなってきました。これによって、大体築20年より前の築浅の家であれば、厳しい軽井沢の冬での快適に過ごせるようになってきました。

避暑地軽井沢から、通年保養地軽井沢への進化です。
それに連れて軽井沢の家も、別荘からセカンドハウスへと進化してきたのです。

さて軽井沢でセカンドハウスを買う場合の平均的な予算はいくらくらいでしょうか?

4000万? 6000万? もちろんこれは個人の懐事情次第でしょう。しかし、共通していえることは、東京かどこかに自宅があり、それに加えて2件目の家を買うとことです。考えてみれば、かなり贅沢な行為であると言えます。普通の人ならば自宅の購入にローンを抱えていることが多いでしょうから、それにくわえて2本目のローンを組むということはやはり経済的な余裕が必要となってきます。

さて、先述の通り、コロナパンデミックの間軽井沢は不動産需要が増しました。いったいこれはどのような原因によるものだったのでしょうか? コロナによって経済活動が規制された中で、お金持ちが増えたとは考えにくい。つまり、テレワークの普及によって、首都圏への縛りが緩くなった結果、軽井沢への移住ニーズが高まったのではないでしょうか?

わたしは個人的に東京‐軽井沢の二拠点生活をしています。軽井沢には過去20年間別荘を持ち、この高原の町が大好きです。しかし、2週間もいれば同時に東京が恋しくなってきます。東京はそれほどまでに魔力を秘めた街だと思います。

東京の混雑はいや、もう少し環境の良い所で暮らしたい、でも、品ぞろえのよいスーパーや、ブックカフェやたまには美味しい外食、つまり文化を諦めきれない、このような都会居住者の移住ニーズに軽井沢がピッタリとマッチしたのです。

もし、自宅を処分して軽井沢に移住してくる目的で家を探すのなら、予算は遥かに大きくなります。比較対象が首都圏のマンションなどの不動産となってくるからです。

コロナ禍での謎の軽井沢不動産相場の高騰~これを説明する鍵は、どうも移住ニーズの流れ込みが関係しているようです。

では 別荘 → セカンドハウス → 自宅という流れなのか?

コワーキング、二拠点生活などのポストコロナキーワードを考えてみると、事情はもう少し複雑なようです。

次稿ではこの当たりをもう少し掘り下げて考えてみたいと思います。

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