軽井沢辞典

2021.11.05

軽井沢民泊考

2018年に民泊新法が施工されて以来、軽井沢での民泊に関してホットな議論が交わされてきました。日本を訪れるインバウンド外国人観光客の数が急増し、民泊もそれに歩調を合わせて急成長する中での、法整備が与えた影響は多大なものがありました。

特に注目を引いたのが、軽井沢町の民泊拒否宣言です。一般的には、民泊禁止宣言と呼ばれている町の行動です。

ここで民泊拒否という言葉を選択したのには理由があります。このトピックに関する前稿で説明したように行政による民泊の監督は民泊新法、正式名称では住宅宿泊事業法に基づくものです。しかしながら、この法律は、軽井沢町に民泊を禁止する権限を与えてはいません。5,7,8,9月の夏季などのハイシーズンでの民泊営業を禁止してはいますが、完全に禁止するという立法権限は与えられていないのです。

立法権限によっていない以上、町の民泊禁止宣言は”お願い”と呼ぶのが正確であることになります。

この理由により、町のアクションは民泊拒否宣言と呼ぶのがより正しい表現であると感じています。

さて、軽井沢町がそこまで民泊を拒否する理由はどのようなものがあるのでしょうか?

まず考えられる大きな理由はオーバーツーリズムの問題です。

軽井沢は京都と並んで、行政が民泊に否定的な町の代表です。そして、全国的、あるいは外国人に対しても知名度と人気が高いという点でも、軽井沢と京都は似ています。つまり、観光客を呼び込むために民泊に頼る必要がそれほど高くない、という共通点も併せ持っているのです。

オーバーツーリズムとは、多すぎる観光客によって地元住民の生活が妨げられる問題を指します。コロナ前、多すぎる観光客によって京都の町が混雑し、住民の生活に影響が出るに及んで大きな問題となったことは、まだ記憶に新しいです。

それに加えて、軽井沢でのオーバーツーリズム問題は、特有の複雑な問題をはらんでいます。

それは、軽井沢という場所が持つ”高級”という意味性です。昔も今も軽井沢に別荘を持つということが、社会の成功者という記号性を持つということは、少し考えてみれば思い当たります。

”健全な保養地としての軽井沢の環境を守る”というのが、町の民泊拒否宣言の理由です。

そして、その健全な保養地として矜持を得ている人というのは、最低でも数千万円のお金をセカンドハウスにつぎ込むことができるだけの、経済的余裕を持つ人なのです。

なるほど、これは社会的成功者と呼んで間違いはないでしょう。

これだけのお金をつぎ込んで、やっとのことで軽井沢に別荘を構えたのに、気が付いてみるとお迎えの家では民泊とやらを初めて、観光客が入れ替わり立ち代わり滞在する。

これでは気が休まる暇がない。

軽井沢町の民泊拒否宣言の背後には、このような一部の別荘保有者の民泊に対する敵対心も潜んでいるのかもしれません。

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