軽井沢辞典

2021.04.06

軽井沢の理想の家を探して

軽井沢に適した家ってどんなものでしょうか?

外国人宣教師たちが軽井沢にやってきた明治時代初め、裕福な実業家ではなかった彼らは質素な山荘を建てて、夏を過ごしました。カナダなど寒冷地からやってきた彼らにとって、東京の夏の灼熱は身体に応えるものだったのでしょう。 軽井沢には、当時の別荘が今でも現存するものがありますが、外壁は気張り、屋根は杉皮拭きか瓦、そして壁には断熱材は入っていません。

最低気温がマイナス15℃にもなる軽井沢の冬をこのような家で過ごすことはできません。
”軽井沢は盛夏の時期を除いて夜なんかは1年中暖炉を焚いて暖を取る。そして冬は寒すぎるから来ないんです”
とは知り合いの人の軽井沢評。

しかし、時代は進み、家の性能も飛躍的に上がってきました。今、軽井沢に家を求める人で、純粋に夏の避暑だけを目的としている人は少数派でショウ。今では、断熱性能に気を付けて家を建築すれば、寒い軽井沢の冬でも快適に過ごせるようになってきたのです。

しかし、家を建てることは楽しい反面不安なものです。そして、不動産屋さんなどで聞くと、軽井沢の寒さと湿気に関するホラーストーリーを散々吹聴されて、恐ろしくなってしまう人もいるかもしれません。

しかし、安心してください。基本的に家造りは楽しくシンプルなもの。例えば、米湿地帯にワニが潜む高温多湿のフロリダから、1年の長きに氷で閉ざされるアラスカまで多種多様な気候を抱える米国でも、住宅は2x4と呼ばれる木造住宅が基本なのです。

家造りが多分に混乱しがちなのは、考えること、決めることがやたらと多いことに加えて、建築業界の特殊性も多分に影響しています。例えば、わたしが最初の別荘を建てた20年前、巷ではいい家が欲しいという本がベストセラーとなって巷を席巻していました。詳細は省きますが、この本を書いた松井さんという方は、当時ソーラーサーキットという工法で家を建てていて、この本はそのソーラーサーキットでいかに良い家ができるかを力説したものです。

ソーラーサーキットでいい家ができるということは多分正しいのでしょう。わたしは個人的に建てたことはないので、想像でしかありませんが。英語で、Solar circuit allows you to live in A good house. というのと、‘Solar circuit allows you to live in THE good house というのでは意味が違います。 The good house と表現すると、いい家が強調されて、”唯一無二の良い家”,”いい家はソーラーサーキットでしか建たない”という意味を帯びてきます。

そしてそれが松井氏がこの本で述べていることなのです。冷静に考えて、これは明らかに言い過ぎでしょう。例えば、トヨタの販売店の店主が、”プリウスはいかに唯一のいい車か”という本を買いて、そしてその本がベストセラーとなる状況を考えてみてください。ちょっと違和感はないでしょうか? でも住宅業界では、このような珍事が結構起こっています。

建築業界の特殊性に関しては話し出すといろいろありますが、閉話休題

別荘となるとより思い入れが高く、非日常的な喜びを感じさせてくれる家を欲しいと思われる方も多いでしょう。これはデザイン的な側面です。そして、デザインには正解がないので、唯一無二の美しい家~ THE beautiful house というものは存在しません。

例えば、わたしは白壁に黒い柱がデザインのチューダーデザインが大好きです。愛していると言っていいでしょう。しかし、このわたしの好みは普遍的なものではないので、このわたしの好みを他の人に強要したりはしません。レンガの家が好きな人に、そんな家は趣味が悪いのでチューダーにするべき、などと言ったらケンカになるだけです。

しかしながら、性能面では正解は存在します。

例えば、構造が強い家と弱い家とでは、あなたはどちらを求めますか? よもやわたしは弱くて風が吹くとグラグラする家が好きなんですという人はいないでしょう。また、冬に暖かい家と、寒くてブルブル震える家とどちらが好みですか?と質問されて、後者を選ぶ人もまあいないでしょう。

あまり公にはなっていませんが、日本の住宅の性能はm先進国と胸を張るにはお粗末なレベルが残念ながら長らく続いてきました。

それや、これやで、家造りにはあまりに多くの要素、あまりに多くの人々の事情、そして怨念が絡み合っていてその実情を見通すことが難しくなっているのです。

ここら辺の事情を解きほぐしながら、軽井沢でいい家とはいったいどのような条件を備えているものかを一緒に考えていきましょう。


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