軽井沢辞典

2022.11.07

軽井沢の寒い冬に備えて~別荘の水抜き

明治時代に外国人宣教師たちによって見出されて以来長きにわたって、軽井沢は日本を代表する”避暑地”として有名でした。つまり、軽井沢を訪れるのは夏オンリーだったということです。もちろん、個別の家ごとによって差はありますが、このような状況が徐々に変わってきたのは、大体25年前くらいからだったのはないでしょうか?

1990年代当時の典型的な日本の住宅のスペックは、
断熱材=せいぜい10㎝のグラスウール
窓= 一重ガラスのアルミサッシ
というものでした。そして、当然このような断熱性能では、標高1000mに位置する軽井沢の厳しい冬を、暖かく快適に過ごすことは難しかったので、おのずと軽井沢を訪れるのは夏オンリーとなったのです。

しかし当時の円高もあり、日本で輸入住宅ブームが巻き起こったのです。北米の住宅ではツーバイフォー住宅が主流であり、壁が箱状の形となっていて断熱材をぴったりと収めることはそれほど難しくありませんでした。また、窓は二重ガラスの木製かあるいは樹脂サッシ、アルミサッシを使用する国は、先進国では日本くらいのものだったのです。

そして輸入住宅の性能にも触発されて、日本の住宅の高断熱化がこのころから進んできました。そして、軽井沢の冬であっても寒い思いをせずに過ごせる家が、一般的となってきたのです。この時、軽井沢の別荘はセカンドハウスへと進化しました。

しかしながら、冬の滞在にはもう1つ問題が残っています。”水抜き”です。セカンドハウスへに滞在していざ家へと変えるとき、次に来るまでに数日間空いてしまうと、水道管が凍り付き水が使えなくなってしまうのです。これを防ぐために、以下の手順で水抜きを行わねばなりません。

1.家の外の水道管の元栓を閉める。これは大体10㎝ほどの丸い金属の蓋の下にあります。これで家の中への給水が止まります。


2.キッチン、洗面、お風呂などありとあらゆる蛇口を開けます。当然水は出てきませんが、蛇口に残った水がチョロチョロと流れてきます。
3.これに加えて、トイレ便器の水も凍る恐れがあるので、車の不凍液などを入れます。
4.さらにボイラーにも水が残っていてこれが凍るとボイラーが破裂するので、専用の水抜きネジを緩めて内部の水を抜きます。

どうですか?中々大変です。そして、次回別荘を訪れたときに、これとは逆の手順で水出しを行う必要があるのです。

幸いなことに、現在ではこのような面倒な水抜きを不要にするシステムができています。ただ、我が家を水抜レスとするには、少しばかり周到な用意が必要です。

この水抜きレスシステムの考え方と骨子として、まず水道管・排水管をできるだけ床下の基礎の中に収めることにあります。そしてその上で、基礎内に暖房を施すことで、気温が零下に下がらないようにすることで、凍結を防ぐのです。この放熱器には石油などのボイラーで沸かしたお湯をパイプで配水します。

ボイラーで温めるお湯の温度、そして運転時間はタイマーで設定が可能なので、一番寒くなる夜の数時間だけ運転することで、コストを下げることができます。

もちろん床下放熱器による暖房は水抜きレスのためだけでなく、家全体の暖房としても使うことができます。 放熱器の上にはガラリ・スリットで床下から家の中に空気が流れる通気口を設けることで、家の中も暖めるのですが、エアコンなどで室内空気だけを暖める一般的な方式と違い、床、そして壁と家の躯体が暖まるので、室内温度に比べて壁などが冷たいことから生じる、不愉快な冷輻射の減少が少なく、頭寒足熱なとても快適な暖房方式です。

しかし、床下に熱源があるので、床下は室内空間と見なして、基礎を断熱しなければなりません。今でもありがちな、基礎換気口あるいは土台を持ち上げて基礎との間に空間を作る基礎パッキンなどはもってのほかです。また、間接的な輻射熱暖房であるので、家全体の断熱も高めないとその効果は実感しにくくなります。

別荘地から通年の保養地へ、、軽井沢が進化を遂げる中で、煩わしい水抜きから解放してくれる床下暖房は一考に値するのではないでしょうか?

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